高校一年生
昆虫採集


 どうも、今日は昆虫採集についてお話をさせていただきます。





 みなさん、
 小さい頃はよく山に入って、
 クワガタとか捕まえませんでした?






 私も小学生や中学生の頃は、
 近所の林の中で、それは夕方暗くなるまで、
 友人たちと昆虫採集に夢中になったものです。
 スズメバチに追いかけられたのも、今ではよき思い出です。






 さて、高校生になった私は、初めての夏休みのとき、
 中学の同級生Nの家に泊まりに行きました。






 そこで、Nがこんな提案をしたんですよ。





 N「なあ、今夜カブトムシとか捕まえに行こうぜ」





 そういえば、最近昆虫とも触れ合わなくなったなあと、思った私は、





 光一「オッケー。で、今から行く?」





 Nは、ちょっと待てと言って、
 部屋を出るとある秘密兵器を持ってきました。
 ハチミツです。






 N「これを今から木に塗ってこようぜ。

  そうすれば夜中には」





 なるほど、
 甘い蜜を吸いにきたクワガタやカブトムシを
 一網打尽もとい捕獲する作戦ですか。






 光一も、Nの成長ぶりに感心せざるを得ませんでした。





 ちょっと、商業資本家の発想がよぎります。





 売れるほど採れれば、
 近所のガキンチョに売りつけて、


 我々の夏はハッピーじゃあないですか!!





 少年たちは、商業資本に少しずつ汚染されていたのです。





 これが、大人になるということだったのでしょうか?





 我々は高校生。
 頭のいい高校生。
 そして夜更かしもできる高校生。
 小学生のガキンチョ達にはできない捕獲作戦です。






 で、Nの家から自転車で20分ほどのところにある、
 周囲に全く人気のない、さびれた社。
 周囲約一キロ近くにわたって、家らしいものもありません。
 確かに、捕獲作戦にはもってこいのポイントでした。






 さて、昼間に蜜を塗って行った私たちは、
 夜中の二時過ぎに、
 採集用・ピンセット・虫網・昆虫かご・懐中電灯という、
 おそらく当時考えられる最も最大級の武装をして、
 意気揚々と出かけていきました。





 さて、その社の付近。
 電柱の下以外に明かりはありません。
 本当に真っ暗闇でして、自転車のライトのみが道筋を照らしていました。






 それでも、私とNは怖くなどありませんでした。
 昼間蜜を塗りたくった木には、


 きっと売れるほどのクワガタとカブトムシがいるはずだ!!
 (↑ここ重要)

 と、固く信じていたからです。





 そして、夜中に緻密な作戦を練って捕獲に行くという高揚感が、
 少年たちの胸を躍らせていたからです。






 さて、ポイントのある社に着きました。
 自転車を降り、懐中電灯をつけます。
 で、昼間に蜜を塗りたくった木を探します。






 私、遠目にですが、なんとなく見えたんですよ。
 その木が……………………
 私、意外と冷静にモノが見えていました。
 それ故に、戦略的撤退を考えました。











 しかし!!










 N「おう、どうだ? 結構いる?」

 光一「まて!! 明かりを向けるな!!

 N「ん?」





 私の叫びは遅すぎました。
 Nは、期待に満ちた目で、無謀にも、
 真っ暗闇の中にぼんやりと浮かび上がるその木へ、
 明かりを向けてしまったのです…………






 そこには……





 N「あ!?

 Nの期待に満ちた目が、変化しました。

 そう、恐怖という名のそれに…………





 ぶぶっぶぶぶうぶ





 無数の…………





 光一「ひ……」





 がさがさ





 クワガタとカブトムシそして…………










 木の表面を埋め尽くした、

 ゴキブリ・カマドーマ(便所こおろぎ)ナメクジが

 我々を待ち受けていたのです!!





 突然明かりを向けられた昆虫は、

 どういう反応を見せるのでしょうか?





 我々は、





 ぶううううう





 それを、





 ぶううううううううう





 N&光一「ひいいぃぃぃぃ!!





 身をもって知りました。





 大量のゴキブリとカマドーマが、光に導かれて、

 一斉に乱舞したのです。





 光一&Nだだだだっだだだぁぁぁぁぁ

 ぶぶぶぶうううううううう





 光一「ひ、ひいいい!!

 N「に、逃げろぉぉぉ!!
 (注:言われなくても逃げています)





 空間を埋め尽くさんばかりに、
 我々が昼間に塗りたくった蜜に終結していた、


 ゴキブリ・カマドーマ連合軍が、

 若干二名の小隊に対し、

 その数十倍の規模で襲い掛かってきたのです!!





 昆虫採取どころか……
 昆虫に最終処分されかけました……






 我々の持参品
 採集用ピンセット・虫網・昆虫かご・懐中電灯……


 殺虫剤くらい持っていくべきでしたか?
 ライターも……そうすれば火炎で追い払えたかも……






 結果的に、甘い蜜を吸いにきた昆虫を捕獲するどころか、
 甘い蜜を吸おうとした光一とNが、
 甘い蜜を吸っていた昆虫連合軍に、
 見事撃退されたわけです。






 それ以来、私もNも、昆虫採取に行こうとは言わなくなりました。
 そして、それが私の最後の昆虫採取でした。



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