  | 
      光一 
       
      「おはよう…………」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「おはようございますぅ♪」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「何を書いているのかね?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「えー、何だと思いますぅ?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「…………綾香君?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「はい?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「何を書いているかは知らないが、 
       
      七夕はもう終わっているんだけどねえ」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「何を言っているんですかぁ?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「いやだって………… 
       
      折り紙の切れ端に何か書いているから」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「あー、これは近くにたまたまあったので、 
       
      これに書いているだけですよぉ」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「で、結局何を書いているのかね?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「何でしょうかぁ?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「質問に質問で……まあ、いい。 
       
      そうだねえ…………」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「ふむふむ…………」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「四則混合ぐらいはできるようになりたい! 
       
      …………とかかねえ?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「四則混合くらいできますもん!!」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「本当かねえ…………」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「さすがの私でもぉ、 
       
      足し算と引き算くらいできますよぉ…… 
       
      小・中学校は出てるんですからぁ」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「他にも掛け算と割り算があるのだが……」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「そのくらい………… 
       
      今は電卓があるんですぅ!」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「結局自信がないのかあるのか……」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「ともかくぅ、そんな事書いてません」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「いや、バカなんだからさ、 
       
      せめて神頼みくらいはした方がいいんじゃない?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「バカじゃないもん!!」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「無理を言わない方が良いよ。 
       
      どうせボロが出るんだから」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「むぎゅぅぅぅぅ!! 
       
      人を馬蟹するなぁー!!」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「はいはい。 
       
      それを言うなら『馬鹿に』な。 
       
      で、何のお願い事を書いているのかね?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「だから……別に神頼みとかじゃなく……」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「結局何なのかね?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「賃上げ要求!!」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「…………誰の?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「ここ、私しか従業員いないでしょうよぉ!」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「ああ、君の? 
       
      四則混合にも自信が持てず、 
       
      ヘマばかりするウェイトレスがいたっけねえ?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「むぅぅぅ!!」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「何でそんなのの賃金を上げなきゃならんのだ。 
       
      そんな理不尽な要求通るわけがない。 
       
      そもそもそういうのを、折り紙の切れ端に書くか!?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「このカフェで働いて今月で6年になるのに、 
       
      未だに賃上げが無い方が、理不尽ですよぉ」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「だって、その割には君………… 
       
      未だに全然仕事できないんだもん」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「それは愛嬌ですよぉ…………」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「じゃあ、賃金が上がらないのも愛嬌だよ」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「マスターの横暴。オウボー!!」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「何とでも言いたまえ。 
       
      その間に、少しでも賃金が上がるよう 
       
      スキルアップの努力でもした方がよいのでは?」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「マスターのあんぽんたーん!!」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「言われても痛くもかゆくもないが……」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「マスターのロリコン!! 
       
      40歳手前のロリコンマスター!!」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「誰が40歳手前だー!! 
       
      まだ私は28歳のピチピチ肌だ!」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「だってぇ……マスター取引先の人に 
       
      とても28歳に見えない。とっくに30代だろ? 
       
      って言われたんですよねぇ?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「あー、うるさいうるさい! 
       
      私は何と言われたって28歳なんだ。 
       
      1980年生まれの若者なんだ!!」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「若者って…………もう歳なんですからぁ、 
       
      マスター努力が足りないのではぁ? 
       
      若くみられるための?」 | 
    
    
        | 
      光一 
       
      「見られるも何も、私はまだ若者!!」 | 
    
    
        | 
      鳴島 
       
      「マスターがそう言い張れるなら、 
       
      私だってオバカじゃないし、 
       
      もっと賃金上げてくれたっていいじゃない!!」 |