|  | 鳴島 
 「マスター、
 
 おはようございまっすぅ!」
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      |  | 光一 
 「はい、おはよう」
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      |  | 鳴島 
 「わくわく」
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      |  | 光一 
 「……………………」
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      |  | 鳴島 
 「わくわく」
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      |  | 光一 
 「……………………」
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      |  | 鳴島 
 「わくわくわくわく!」
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      |  | 光一 
 「自分で『わくわく』って擬音を
 
 言うのはなんだか変だよ?」
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      |  | 鳴島 
 「あれ?」
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      |  | 光一 
 「何をワクワクしているのかは知らんが、
 
 はい、仕事仕事」
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      |  | 鳴島 
 「あれれ〜?」
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      |  | 光一 
 「朝からどうしたかね?
 
 何か悪いものでも食べた?
 
 凍った路面で、頭でも打ったかい?」
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      |  | 鳴島 
 「違いますよぉ!」
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      |  | 光一 
 「ふむ。では、今日は忙しい。
 
 まず、今日の予約を再度確認するぞ。
 
 クリスマスディナーの予約だが……」
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      |  | 鳴島 
 「それですよぉ!!」
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      |  | 光一 
 「は?」
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      |  | 鳴島 
 「なーんだ、
 
 ちゃんと分かってるんじゃないですかぁ」
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      |  | 光一 
 「何をだね?
 
 今日の仕事内容?」
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      |  | 鳴島 
 「ジングルベ〜ル、ジングルベ〜ル
 
 鈴が鳴る♪
 
 今日は楽しい…………」
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      |  | 光一 
 「くるしみます」
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      |  | 鳴島 
 「違いますよぉ!」
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      |  | 光一 
 「何を言う。
 
 サービス業にとっては、クリスマスは稼ぎ時だ。
 
 だから忙しい。
 
 『メリー、くるしみます』で合ってるよ」
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      |  | 鳴島 
 「だ〜か〜ら〜…………」
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      |  | 光一 
 「なんだね、この忙しい日に……」
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      |  | 鳴島 
 「えっとですねぇ」
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      |  | 光一 
 「時間に余裕がないので、
 
 手短に言ってくれないかね?」
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      |  | 鳴島 
 「じゃあ、
 
 プレゼントください♪」
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      |  | 光一 
 「は?」
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      |  | 鳴島 
 「ぷ〜れ〜ぜ〜ん〜とぉ〜♪」
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      |  | 光一 
 「……………………」
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      |  | 鳴島 
 「ぽち袋に現金で良いですよぉ♪
 
 ハッピー・クリスマース♪」
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      |  | 光一 
 「正月が混じってないかね?」
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      |  | 鳴島 
 「あ、ちょっと先走っちゃいました。
 
 じゃあ、現金プレゼントは来週で。
 
 ということで、今は現物ください」
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      |  | 光一 
 「来週になったらなったで、
 
 何で大人の君にお年玉を……
 
 どちらにせよ、あげる理由がないが」
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      |  | 鳴島 
 「何かくれたっていいじゃないですかぁ。
 
 マスターのケチンボ!」
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      |  | 光一 
 「クリスマスなんて……
 
 何で西洋かぶれの祭りなんかで、
 
 こちらが出費しなくてはならんのだ」
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      |  | 鳴島 
 「マスターのアメンボ!!」
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      |  | 光一 
 「語呂合わせは求めていない」
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      |  | 鳴島 
 「け〜ち〜」
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      |  | 光一 
 「今のローマ教皇だって嘆いているぞ。
 
 『最近のクリスマスは
 
 商業主義に汚染されているって』」
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      |  | 鳴島 
 「ど〜け〜ち〜」
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      |  | 光一 
 「そもそもクリスマスと言ったって、
 
 社会人には関係ない。
 
 さあ、仕事仕事!!」
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      |  | 鳴島 
 「かい〜しょ〜なし〜」
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      |  | 光一 
 「……………………
 
 さっきからしつこいね、君も」
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      |  | 鳴島 
 「今日の私はクリスマスプレゼントが欲しいです。
 
 もらってあげても良いです。
 
 なので、プレゼントがないと、ストライキします」
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      |  | 光一 
 「なんだね、その無茶苦茶さは……」
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      |  | 鳴島 
 「マスターがプレゼントくれなきゃ、
 
 今日の私はストライキですぅ。
 
 不退転の決意ですよぉ」
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      | 
 
 
 
 
  
 ボクちゃん、
 
 不退転の決意で頑張ります!!
 
 だから、みんないぢめないで。
 
 いぢめかっこ悪い!
 
 
 
 
 
 
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      |  | 光一 
 「今、何だか変な人が頭をよぎった……」
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      |  | 鳴島 
 「話を逸らさないでください!
 
 今日の私は真剣ですよぉ!」
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      |  | 光一 
 「それぐらい、
 
 普段の仕事も真剣になってください」
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      |  | 鳴島 
 「話を逸らそうとも、
 
 今日の私はまさに不退転!」
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      |  | 光一 
 「君の口から不退転なんて……
 
 よくそんな言葉知っていたね。
 
 高校時代、国語5段階中2だったのに」
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      |  | 鳴島 
 「さ、このカフェ唯一人のウェイトレスが
 
 クリスマスの繁忙期にストですよぉ。
 
 解決にはプレゼントを要求します!」
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      |  | 光一 
 「なるほど、わかった」
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      |  | 鳴島 
 「やったぁ、じゃあプレゼント!!」
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      |  | 光一 
 「今日の綾香君は無断欠勤ということで、
 
 減給扱いでよろしいね?
 
 だって、ストの理由が正当じゃないもの」
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      |  | 鳴島 
 「あにゃっ!?」
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      |  | 光一 
 「時給、10パーセントカットでいい?
 
 私からのささやかなプレゼントだよ、
 
 遠慮せずに受け取りたまえ」
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      |  | 鳴島 
 「…………粉骨砕身、
 
 身を粉にして働かせていただきますぅ」
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