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授業

 さて、では前段階として下記の事が了解されているということを前提に、おそらく最も関心が高いであろう教育実習時の「授業」について書いていきます。
 まずは、ここまでの話で次の4点が了解されていると思います。
 1、教育実習は仕事と思う事(つまりは一切妥協しない)。
 2、謙虚であること(実習はさせてもらっている)。
 3、仕事は率先して行うのが社会人(大学生意識を捨てる)。
 4、誰のための勉強かを考える(教室で授業を受ける生徒たちを常に念頭に)。
 それでは、これらは最低限度の了解として、授業の話を進めましょう。
1、教材準備(前段階)
 これは、今までの記事を見てきてもらえれば、その重要性を理解してもらえていると思います。特に「2、前準備」でその必要性を書いたはずです。
 流れとしては、
実習前の段階 流れ
1、担当教科・学年の確認→2、担当教諭との打ち合わせ→3、事前教材研究
1、「担当教科・学年の確認」2、「担当教諭との打ち合わせ」
 これは、実習の少なくとも3ヶ月前には済ませていると思います。自分が何の教科を担当し、何年生を受け持つかわからなければ、準備のしようがありません。また、@とAは一緒に行うと考えていいでしょう。私は5〜6月に実習をさせていただきましたが、打ち合わせは2月の時点から始めていました。
3、「事前教材研究」(実習時の教材研究と被りますが、まったく別個のものと考えてください)
 1、2、の流れが終われば、あとは実習校で使われている教科書と資料だけは最低限入手することになります。何度も読み返して、どのような流れで授業が行われることになるかも考えておきましょう。
 そうして、この段階で、わからない用語も頻出するでしょうし、教科書や資料の特にどこが重要なのかわからないなど、問題がたくさん出てくると思います。
 そういう段階に達したならば、大学受験用の要点ノートや、教科書の解説書を買って、要点をつかんでおく必要があります(私は高校で日本史を教えたので、大学受験用の問題集などを買いました)。
 また、早い段階から「授業用ノート」を作成することをお勧めします。特に私のように「社会科」などを行う方は、「黒板への板書」が要点を得ている必要があります。そうして、板書に時間を食いすぎないことも重要ですので、この作業は重要性を帯びてきます。というか、そういった「授業用ノート」なしに実習をするのは無謀だと言っても過言ではありません。一回一回の授業で板書内容にズレが出てはマズイでしょう?
 大体、この段階までは少なくとも実習の2週間以上前に達しておくほうが、自分が実習をする際に余裕を持って臨めると思います。余裕が持てれば、それだけ周囲の把握ができるし、自分の欠点が見えるので、この作業は不可欠です
2、実際の授業と教材研究(実習段階)
さて、実習前に「事前の教材研究」「授業用ノート作成」が済んでいることを前提にします。
いざ実習が始まると、「授業に限って」話をすれば以下の流れの繰り返しになります。
授業実習 流れ
1、教材研究・授業計画提出→2、授業→3、反省点の打ち合わせ→4、教材再研究・ノート再作成(以降1、へ戻る)
 1、教材研究・授業計画提出(何をどこまで教えるか? 時間配分は?)
 まず、授業をするにあたって、どういう資料を生徒たちに提示するか、一回の授業でどこまで進めるか、生徒たちに覚えてもらうべき箇所は……などのために、何度でも教材研究をする必要があります。「授業用ノート」はそのたびに再作成をすることとなるでしょう。私も何度も実習中に作り直しています。
 さて、実習の段階がそれ以前の単なる教材研究と異なるのは、「授業の配分時間」を考えなければならないことです。
 これは教科や実習校ごとに異なるのですが、毎回の授業で「指導要領」なるものを作成し、それの提出を求められることがあります。「指導要領」についての説明は『4、授業外』で行います。簡単に言えば、「毎回の授業計画書」です。「何分間で何を教える、生徒に発議させる」などの細かい指導内容を書いて提出し、担当教諭からGOサインをもらうことになります。
 私は「指導要領」に関しては提出義務はありませんでしたが、作成した「授業用ノート」を担当教諭に毎回見せ、デモンストレーションを行っていました。そうして、指摘を受けた箇所を訂正→デモの繰り返しを行い、そうして本番の授業に臨んだのです。
2、授業(さて、実践です)
 さて、この「授業」が教育実習で最も大きな比重を占める要素になるわけです。みなさんの関心も、おそらくここに向いているのでしょう。……それだけだと困るのですけどね。それはまた別の機会の話にします。
 さて、ここまでの段階で授業の準備を完了し、担当教諭からのGOサインも出ていることでしょう。あとは、実践するだけです。
 しかし、実際に約40人の生徒を前に授業をすると、今までの計画通りに進まないと悩むことになるでしょう。これは、授業計画の見通しが甘かったわけではないと思います。経験不足が大きな原因です。
 だからといって、「甘え」は許されませんよ。生徒の目はかなりシビアですからね。
 私も、最初の授業では「板書」「時間配分」において失敗したと思ったものです。ただし、その反省の上に立ち、さらに授業も回数をこなすことで、計画通りに進むようにはなりましたが。
 では、授業に関しての留意点だけピックアップしておきましょう。
授業時の留意点
1、板書 2、時間配分 3、声 4、タイミング
 とりあえず、上記の4点が最低限留意することになる点でしょう。
 1、「板書」
 「板書」は、生徒がノートを取る際の「お手本」となります。基本的に生徒はあなたが黒板に書いた内容を写し、後にはそれで復習するのです。
 ということは、その授業でもっとも要点をつかんだものが書かれるべきなのです。
 しかし、「板書」はあなたが書く時間以上に、生徒がノートに写す時間の方がかかるのです。よって、ここに多くの時間を割きすぎると、授業が全く進行できなくなり、本末転倒となります。「教材の精選」はまさにこの「板書」に表れるといっても過言ではありません。
 何をあなたは「板書」すべきですか?
 さて、「板書」は同時に生徒にとって見やすいことも重要です。それは、要点をとらえているというだけではなく、「きれいに書けていること」です。
 板書を必要としているのは、あなたではなく「生徒」なのです。彼らのために授業があることを忘れないでください。
 「きれいに書く」というのは、「文字のキレイ汚い」ではありません。つまりは、教室のどこに座っている生徒からでも見える文字の大きさ。整理された黒板の使い方のことです。これは、実習生の控え室などで、実際に自分の「授業用ノート」を書いてみて、模擬授業をすればその「良し悪し」が判断できます。
 「この黒板使いで、生徒は見やすいだろうか?」
 そう疑問を覚えたならば、「板書」の仕方を考え直して見ましょう。他の実習生仲間に対して実演し、意見をもらうことも有益です。
2、時間配分
 さて、これが一番問題となります。
 説明のために、私が教育実習時に用いた時間配分から基本要素だけ抜き出してみました。
0分 授業開始
5分まで 前回の復習(生徒へ質問を中心に)
15分まで 板書(その時間の必要分全てを一気に)
45分まで 説明(板書内容・教科書に沿って)
教科書(指名し読ませる)
内容の適宜説明(資料等)
50分まで 本時間復習(重要な点の確認)
55分まで 質問受付・終了
              ※私の実習校は55分授業でした。
 私は「高等学校社会科:日本史:1年」で教えていました。
 社会科はとりわけ板書の多くならざるを得ない科目です。そのため、板書を何度も繰り返すのは効率が悪いと考え、最初に一気に板書をし、重要箇所だけ空欄にして、埋めていく形式を取りました。
 この方式は、私が「この仕事をするにはこうするか?」と考えただけで、あなたがこのように実行する必要はありません。自分で、「自分の仕事はこうだからそうしよう」と考えてください。
 さて、授業が始まったならば最初に必要なのは「前回の復習」です。つまり、前回の授業で最も重要なところを確認する必要があるわけですね。この際に、前回のノートと教科書を開かせてください。これは、「生徒の学習段階」を確認するという非常に重要な作業です。この際、前回の授業の流れを軽く言って、要点部分だけ生徒に質問して答えさせるといいと思います。
 私はその次に、「では、今日の分の板書を最初にしますね」と言って、一気に板書しました。この際、私が最初に書き終わるので、終わったら机間巡視を行って、生徒がちゃんと教科書を開いているか? 板書を移しているかをチェックして回ります。その際、自分の板書がどの席からでも見えるかどうかも確認するべきでしょう。時間の都合もあるので、ある程度の時間で区切って、8割方の生徒が書けたら授業に戻りましょう。その際、「では、時間のこともあるので、授業に入ります。写し終わってない方は授業後に他の人に見せてもらってください」と入れた方がいいです。
 さて、ここからがその日の授業の本番です。約30分間。「教科書」を読ませるなどして、生徒にその日の授業内容を一応頭に入れさせます。生徒に読ませたり、適宜質問を挟むのは「生徒の授業参加」を促すためです。ひたすら聞いているだけの授業なんて、つまらなくて眠いですよ。さてその上で、「板書」の空欄を埋めていき、資料なども使いながら、補足説明を行います。私は、この際に「たとえ話」などを用いて、生徒の理解促進を図りました。生徒が笑ってくれてたならば手ごたえあり!! そう考えていたので、なるべく面白いたとえ話ですけどね。ただし、たとえ話が授業内容から逸脱するのは失敗だと考えてください。
 私の「たとえ話」はお笑いコンテンツの「大王」に載っています。私のあだ名は「大王」にされたようです(笑)
3、
 さて、たまに実習生でいます。
 「声が小さくて、何を言っているのかわからない」
 「早口すぎる」
 まあ、実習生は自分が普段どの程度のスピードや音量で話をしているかなど気にはしないでしょう。しかし、授業ではそれを気にしなくてはなりません。
 あなたは、相手が聞き取りにくい話し方をしていたら、内容を理解できますか?
 私は、最初の授業でこう評価されています。
 「君は、字は汚いが、要点は得ている。声も大きくてはっきりしているし、よどみがない」
 つまり、声に関しては及第点だったと言うことでしょうか。
 そもそも、「40人の生徒」を前に、「責任のある立場」で、「仕事としての授業を行う」……そういった緊張感から、自然と「声が小さく」なり「早口」になる人は多いとのことです。
 そうなったら、生徒はあなたの授業を真剣に聞いてはくれませんよ。
 彼らの信頼を得るためには、授業中の話し方にも注意が必要なのです。なんせ、あなたの説明で生徒は授業内容を理解しなくてはならないのですから。あなたが「マズイ」授業をすれば、被害者は生徒全員です。
 しかし、実習生の中には大勢の前で発言をしたことのない方もおそらくいるでしょう。こればっかりは慣れるしかないことです。実習において緊張は必要ですが、過渡にありすぎると授業に支障をきたします。声が小さくなるとか、しゃべれなくなるとか、ささいなことでミスをするとか……。
 ちなみに、声を大きくするのと、叫んだり怒鳴ることは別問題ですよ。生徒を威嚇したり、圧迫感を与えてどうするんですか?
 あなたの声が、教室の一番後ろの席まで聞こえていればいいのです。
 ちなみに、きっちりと落ち着いて、よどみなく話すことができれば、静かな教室であれば、それほど声の大きくない方でも十分に声を届かせることができます。普通に話せば、後ろまで声は届くのです。
 では、何が問題でしょうか?
 自分に自信がない人は、問題を早く片付けたい意識が働くので、自然と「早口」になる傾向があります。また、自信がないゆえに「小声」になってしまい、それが相手とのコミュニケーションで支障をもたらすのです。
 では、実習で自信をつけるにはどうすればいいのでしょうか?
 それは、授業内容をきっちり自分で練り上げ、準備が整っていることが自信につながるのです。あとは、場数を踏むことで自分の欠点がわかり、それが克服できてくると、さらに自信がつくようになります。
 授業内容の練り上げが不十分ですと、「時間が足りない!!」「あれ、これはなんだっけ?」などの迷いが生じ、それが不安につながります。また、「時間がない」とあせる事で「早口」に、「なんだっけ?」の迷いは自信喪失と「小声」につながります。
 声がきっちりだせるようになると、それによって授業がよりスムーズに進むようになりますよ。
 準備がきっちりできているのならば、まずは深呼吸をしてはいかがですか?
 ゆっくり、正確に話すことを心がけるだけでも、教室中に「通る声」を出すことが簡単になりますよ。
 また、重要なところほど強調して声を出すとか、メリハリをつけることを心がけないと、生徒はどこが重要かわからなくなりますよ。声は、授業という生徒一般には「退屈」な時間に「爽快感」「緊張感」などを与える重要な要素なのです。
4、タイミング
 さて、「授業」においては「タイミング」が非常に重要になってきます。これをつかめるようになると、授業の進め具合をかなり自由にできますし、生徒を飽きさせない授業展開が可能になってきます。
 「タイミング」はあらゆる場面で必要になります。
 たとえば……
 「板書から授業内容に切り替えるタイミング」
 「生徒に教科書を読ませたり、質問を振るタイミング」
 「机間巡視をするタイミング」
 「教科書や資料を開けさせるタイミング」
 「大きめの声や、ボリュームを下げた声を使い分けるタイミング」
 などなど、状況に応じてたくさんの「タイミング」が存在します。
 板書から授業に切り替えるタイミングは、早すぎると授業についていけない生徒が出ますが、遅すぎると、生徒が飽きてくる上に、時間が足りなくなります。
 教科書や質問を使うタイミングは、どこで挟むかで生徒の理解進度や授業展開に大きくかかわります。授業を組み立てる中で、ここで質問を挟むと飽きないかなとか……色々「生徒の立場」でも考えてみてください。
 机間巡視のタイミング……これは板書と授業内容展開の間で使えるでしょうか? 先生が回ってくると、生徒は緊張します。当然、ノートを取ろうとするでしょうし、眠気もさますでしょう(笑) しかし、これも使うタイミングです。
 まあ、シチュエーションはケースバイケースなので、自分で授業の想定をしながら考えてください。授業のたびごとにタイミングが異なる場合もあるかもしれませんよ。

 そうそう。授業の際は、教室のどこの生徒も見るようにしてくださいよ。
 私は授業内容は完全に把握して、板書をした後は、教科書を読ませたりする以外は、常に教室の生徒たちを見ていました。一点凝視もやめてください。その地点にいる生徒を圧迫しますから。教室中を常に見ていて、「ああ、この先生は全員のことを見ている」と生徒に思わせるようにするべきです。全体への配慮が欠けるようでは、失格です。

 さて、次回は「授業外」の時間には何をするのか、するべきかについて書いていこうと思います。

コンテンツ
教育実習に関して
1、実習時心得
2、前準備
3、授業
4、授業外活動
5、後片付け
6、放課後
7、その他

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