光一「おっかしーなー……」 
       
       
       
       
       
      最初に車を降りたときは目の錯覚かと思ったんですよ。 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      ズ・ズ・ズ…… 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      光一「……あれ?」 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      車が元の位置から動いているような気がする。 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      家の前はゆるやかな坂になっています。 
      後退していくならまだ心情的に理解できますけど、 
      前進しているような気がしてならないワケです……。 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      気のせいだと思うことにし、 
      家の中に荷物を運ぶことにしました。 
      玄関を開け、ふと振り返ると……。 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      光一「車がない!!」 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      そりゃ驚きましたとも。 
      以前に新車を盗まれていますから。 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      しかし、停車して車外に出てから、 
      ほんの10秒足らずで盗めるものでしょうか? 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      あわてて戻ってみると、 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      光一「ウソ!?」 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      ズンズン 
       
      と車が前進しているじゃないですか!! 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      光一「また盗難か!!」 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      ……運転席誰もいないんですけどぉ…… 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      光一「ゆ、幽霊なの? 
       
          うそ!! そんなの怖すぎだよぉー……」 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      でも、怖くたって取り返さなきゃ。 
      幽霊にだって今なら文句が言える。 
       
      光一「僕の93万円返せ!! 
       
          ひいいやっぱ怖いぃー!! でも返してくださいよぉ」 
       
      きっと幽霊も分かってくれるさ♪ 
      だから、慌てて発進している車に飛びつきました。 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      ズルズル…… 
       
      光一「あうあう!!」 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      引きずられる私……。 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      そりゃそーだ。 
      まずはドアを開けようよ。 
      中に入ろうよ。 
      動いている車を腕力で止められるワケ……。 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      ……ズルズル 
       
      光一「むぅー……きゃあー!!」 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      勝ち目なしと判断し、 
      中に入りました。 
      サイドブレーキはっと…… 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      光一「かかってるな……」 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      ふわっ!? 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
       
      光一「ギアがドライブのまま……」 
       
       
       
       
       
      そりゃあ勝手に進むわけですよ。 
      クリープ現象なんて教習所で教わったでしょ!? 
      目の錯覚なんかじゃありません……。 
      もも、もちろん幽霊なんかじゃありませんでした!! 
      一安心です♪ 
       
       
       
       
       
      光一「のの、呪われたら怖いものぉ……」 |